釈迦に説法

幸せについて考えてみる。

NO RAIN、NO RAINBOW。

  ヘレン・ケラーは、三重苦だったと言われているが、目も見えず、耳も聞こえず、言葉もしゃべれないとして、人生を前向きに生きられる自信がない。音楽も聞けないし、本も読めない。目の前に誰がいるかも解らず、気持ちを伝える術もない。同情しか感じえない僕が一番驚いたのは、彼女のインタビューだった。後に話せるようになった彼女は、障害者の為に人生を捧げたのだが、その頃のインタビューで、「目も見えず、話もできない事は悲しくないですか?」との問いに、「人の目の前には常に二つの扉があり、片方ばかり見ていると、もう一方が見えなくなるのです。」と答え、「あなた方は明日、目が見えなくなってしまうかもしれないという不安があるが、私には、明日目が見える様になるかもしれないという希望がある。」と続けた。小さいながらにそれを見た僕は、漠然と物の考え方は人それぞれで、どういう風にも解釈できるのだなと思っていた。後に僕は太極図というものを知り、世の中の事は対になっている事に辿り着く。太極図は陰陽師の映画なんか見てると良く出て来るが、白と黒の勾玉の様なものが重なったあれである。例えば、ヘレン・ケラーは二つの扉と言った様に、世界中の人の共通の法則としてそれは真実であると思う。悲しみの裏には喜びがあり、希望の反対には絶望が、光の横には影がある。それは絶対であり、どちらかが単独で存在する事はあり得ない。工場に、東北大震災の影響で宮城から来た男の子がいた。男の子と言っても30歳だったが、津波で妹を流され、亡くされたそうだ。彼は気丈に笑っていたが、僕は一言「乗り越えたのかい?ここに来たって事はそう考えて接して良いかな?」と言った。彼は「はい。大丈夫です。」と言った。その時に僕は太極図の話をして、Baby Metalの”NO RAIN, NO RAINBOW”を紹介した。この歌はまさに太極を歌っていると思ったからだ。実際に震災の後、意味を知ってか知らずしてかは知らないが、外国の女性の方が被災地で歌っているのも見た。彼女も僕と同じものをこの歌に感じていたのかもしれない。愛した人との別れはいつだって辛い。僕にももちろん経験がある。それが男友達であれ、彼女であれ、身内であれ。あまり知らない人が亡くなってもそこまで悲しみに暮れる事は無いが、愛した人が対象なら、別れが死でなくても悲しく、耐え難いものだ。その差は何か。そんな時に人はどうすべきなのか。それは太極のどちらを選択するかが全てである。胸が張り裂けそうな悲しみは闇である。しかしその原因は、そうなるまでの過程で大きな光を受けたからである。星が夜の闇で美しく光る事も然りである。悲しみの闇の中を不安を抱えて迷いながら歩くのか、関わった人達が照らしてくれた光を頼りに、前を向いて歩くのか。その選択こそが人生である。ひとつ確かな事は、我々は元々お先真っ暗の人生を生きているという事。明日や未来など、確かなものは最初から無かったという事。闇を歩き続けるのは危険だし寂しい。どこでつまづくか、先に何があるのか解らないのは、とても怖い事だ。だから人は人に出会い、お互いに光となり、少しでも危なくない様に、寂しくない様にしているのだ。自分の人生を照らしてもらっているのだ。最後まで付き合ってくれる事は無理な事。人にはそれぞれ使命があり、寿命がある。別れた所までが限界なのだ。だから別れの時、悲しんでうつむいて闇に戻ってはいけない。闇の隣には確かな幸せという光がある。光を見て、光の中を生きよう。また一人になったからといって、それは元々そうだったのだ。今までの事に感謝し、僕らは光の中をまた歩いて行こう。迷わず、うつむかず、自分の人生を全うしよう。彼等彼女等が与えてくれた灯りを頼りに、途中で闇の中をさまよう人がいれば、今度は自分が光を灯してあげられる存在にならなければならない。

 班が変わってしばらくして、東北の彼が辞めたのを聞いた。今はどこで何をしているのか。太い眉毛だった子よ、春の暖かさを知る者は、冬の寒さの厳しさに怯える。でも春の素晴らしさを知っているから、厳しい冬を乗り切ろうと頑張れる事を忘れないでいて欲しい。雨の後には虹も出る。人が憧れるその美しさは、雨がもたらすのだ。辛い事は、酷な様だが幸せのもたらすものなのだ。どうか光の中を、生きて行って欲しいと願っている。闇も光も、誰にも等しく訪れる事だから。独りじゃないぞ。忘れないでいてくれ。くじけなでいて欲しい。今はただ、太極の光を選んで欲しい。ではまた。

 

  ♪ NO RAIN、 NO RAINBOW  /  Baby Metal

 

どうして眠れないの? どうして夜は終わるの?

いらない 何も 明日さえも 君がいない未来

どうして笑ってたの? どうして? 寂しかったのに

誰も 知らない 本当はただ そばにいて欲しかった

絶望さえも 光になる 止まない雨が 降り続いても

絶望さえも 光になる 悲しい雨が 虹をかけるよ どこまでも

 

二度と会えないけど 忘れないでいたいよ 夢が続くなら 覚めないで

 

どうして笑ってたの? どうして? 寂しかったのに

誰も 知らない 本当はただ 会いたい それだけだった

絶望さえも 光になる 止まない雨が 降り続いても

絶望さえも 光になる 悲しい雨が 虹をかけるよ 今も

 

止まない雨が こころ満たすよ いつまでも