釈迦に説法

幸せについて考えてみる。

留学生活その4 日本人として。

 とある授業中に宗教の話になり、キリスト教であるアメリカ人学生がアメリカの事を偉そうに自慢して、みかねた中国人の先生が、「戦争ばっかりしてるじゃない。」とたしなめた事をきっかけに、イスラム教徒が反発し、ちょっとめんどくさい雰囲気になった時に、イスラム教徒が「日本は仏教でしょ?」と聞いて来たので、「まぁ基本的にはそうですね。」と軽く答えたら、アメリカ人の学生が、「日本はトヨタパナソニックだけだろ?」と言った。僕以外の日本人が苦笑いをする中、僕は瞬発的に「ちょっと待て。日本をなめてんのか?」と言ってしまっていた。「猿まねばっかり。」と言い返されたので、「誰も猿に勝てねえじゃねえか。」と言い返した。クラスは凍り付いたように静まり返り、やばい雰囲気になった所で、違和感に気付いた。「あれ?俺日本の事嫌いだったはずなのに、何で腹立ててるんだろう?」その時にすぐ、エルビスの顔が浮かんだ。”故郷や自分が嫌いなんておかしいよ。”・・・エルビス、俺は中国に来て、君に出会って日本への愛を取り戻せたかもしれない。アメリカ人に腹が立つよ。なにがキリストだよ。さあこうなったら後には引けないぞ。「金儲けなんかの為に、罪のない人巻き込んで戦争してんじゃねえよ。」アメリカ人に言い放った時、「はい、そこまで。」と先生に言われた。僕は頭の中は冷静だった。アメリカ人は両手を挙げて特有の”オーマイガッ”のポーズをしていた。僕はそれを見て笑ってしまった。その授業終わりに、イスラム教徒、アジアの学生なんかが僕の所に来て、「言うねぇ。」みたいな事を言って来た。「恥ずかしい事してごめんね。彼の事を嫌いなわけじゃないから。」と言うと、半年前からこのクラスにいたインドネシアの子が、「ちょっと前にここに居た日本人達はさ、授業にも出ずに部屋でビールばっかり飲んでた。その子達に嫌がらせされてたのがあのアメリカ人の子なのよ。」と言われた。「だからあなたに言い返されてびっくりしたんじゃないかな?前の子達はよくトヨタパナソニックが世界の中心だみたいなおかしな事言っていたから。バカにされてるとも知らないで偉そうにしてた。ちっとも中国語しゃべれないのに。」僕は黙り込んでしまった。その日本人達に無性に腹が立った。その時ハッとした。そして気が付いた。日本から出た時、僕は日本代表選手と同じものを背負っているんだと。初めて日本人と接する人は僕を見て日本の印象を決めてしまうのだと。責任があるのだ。そう気付いてすぐ、僕はアメリカ人の所に行き、「以前の日本人がすまない事をした。僕も失礼な事言って悪かった。これからきちんとするから、僕と日本人を許してほしい。」と謝った。「サムライだね。」と笑ってくれた。英語圏の学生たちが固まっていたが、みんなびっくりしたようだった。握手をし、席に戻ると、ウズベキスタンの二人が、今日から俺達は友達だよな?と言って来た。アメリカ人に文句を言ったのが余程痛快で気に入ったらしい。日本人のクラスメイトは申し訳なさそうに近くにいた。自分の国をバカにされ、何も言い返せない典型的な子達だなと思った。僕も以前はそうだった。これからは気をつけようと、その二人に、「俺達はいつでも日本人代表だから、恥ずかしい事はしない様に気を付けようぜ。」と諭した。「さっきの俺の態度はダメな例ね。」と言って笑わせていると、「インドネシアが今あるのは、戦時中に戦ってくれた日本人のおかげ。フィリピンでもそうよ。」と言って来た子がいた。僕はおじいさんたちは悪い事をしたという教育を受けた。戦争して周りの国に迷惑をかけたと確かに習ってきた。どうやらこの辺も怪しまなくてはならない様だ。僕は既に日本での自分の愚かさに気付いていたため、僕よりはるかに良い教育を受けて心も広い華僑たちの言葉を、素直に受け入れられて、色々勉強させてもらおうと思った。もしかすると僕は、自分や国や、おじいさんたちの事を好きになれるかもしれない。僕は、間違っていたのかもしれないと思った時、なぜか心は晴れやかだった。僕は生まれ変われるかもしれない。新しくできた外国人の友達と、一緒に歩いて帰る道の途中で、いつも昔の事を語りがたらず、正月には決まってお年玉をくれるおじいちゃんやおばあちゃんの優しい笑顔が、北京の空に見えた気がした。

 次の日に日本人が絶対に受けたがらない、日本人が嫌いで文句ばかり言うと有名な中国人の先生がいると聞いて、誰よりも早くその教室で僕は待っていた。確かに日本人は僕だけだった。でも僕は真実を知りたかった。その先生は入って来るなり、「君は日本人か?」と聞いて来たので、「はい。広島から来ました。」とあいさつすると、「悪魔の子め。お前たちはミルクの様な奴ばかりだ。」と言われた。ワクワクした。そうそう、こういうのを待っていた。(笑)この先生の授業を聞いてみよう。僕は、「何故ミルクなのですか?」と聞いた。すると先生は、「そもそもよくこの授業に来たな。他には誰も受けたがらないのに。」と言われたので、「僕は自分の国が嫌いで、ここに来ました。確かに悪魔の様な奴です。」と言うと、「ミルクとは甘ったるいという意味だ。ちょっと悪口を言われると、言い返しもせず、授業すら受けに来ない。」と言われた。なるほど、確かに甘ったるい。(笑)先輩たちはどうしようもねえなと苦笑いしていると、先生は急に、「雨よ来い、風よ来い。そんなものは、恐るるに足らぬ。」と日本語で言った。「昔、戦争をしていた頃の日本人は気概があり、敵とはいえ信用できる人達だった。なのにお前達の世代は何だ。これだけ豊かにしてもらったくせに、先祖の悪口を言われ、黙って笑っているだけ。さもその通りです。日本人はバカでしたと言わんばかりに。」と言われた。僕はもう何枚目か解らないウロコが目からはがれるのを感じて、同時に嬉しくなった。ああやっぱりか。僕の先祖は偉大だったんだな。今の日本人は間違っているんだと確信した。「私はあの頃の日本人が懐かしい。何度同じ国に生まれていればと思った事か。」と遠くを見つめておっしゃっていた。「僕は先生の授業を受けて、日本人で良かったと思い始めています。」と素直に言った。「久しぶりに日本人を見た気がする。」と言われて、自分を誇らしく感じた。先祖をヒーローの様に思い始めていた。

 僕の国の教育は間違っている。でもそれを責めるのは止そう。大切なのは、自分が真実を見付ける事だ。この先生は、日本人が好きで、今の若者を見て歯がゆいのだ。金があるからと偉そうにし、まともに授業も受けずに遊んでいる日本人が嫌いなのだ。僕はこれからこの大学での日本代表。完全に生まれ変わった僕は、デビルマンの心境になっていた。今までは自分の国や先祖を知らずにバカにしていた悪魔の子だったが、もう大丈夫。これからは僕が真実を語って行く。ミルクも卒業だ。真実は今、目の前にある。半年後の僕のこの先生のクラスでの成績は、ダントツでSだった事を付け加えておく。外国に出れば各々がみな日本代表。旅の恥はかき捨てではない。心に刻み付けておいて欲しい。自分だけの問題では、許されないのだ。僕はそれからいつも堂々と答える様にしている。僕は、日本人である、と。ではまた。

 

   ♪ デビルマンのうた   /  十田敬三

 

あれは誰だ 誰だ 誰だ あれはデビル デビルマン デビルマン

裏切り者の名を受けて すべてを捨てて闘う男

デビルアローは超音波 デビルイヤーは地獄耳 

デビルウイングは空を飛び デビルビームは熱光線 

悪魔の力 身につけた 正義のヒーロー デビルマン デビルマン

 

初めて知った人の愛 その優しさに目覚めた男

デビルチョップはパンチ力 デビルキックは破壊力

デビルアイなら透視力 デビルカッターは岩砕く

悪魔の力 身につけた 正義のヒーロー デビルマン デビルマン