釈迦に説法

幸せについて考えてみる。

Daydream Believer。

  「Daydream Believer」という曲がある。アメリカのポップ・ロックバンド、モンキーズの曲だが、僕は忌野清志郎さんが歌う曲の方を、自分の幸せを知るための一曲としてよく聴いている。セブンイレブンの曲、ヘルメットをかぶったTIMERSの曲として認知されているやつだ。僕は昔犬を飼っていて、その愛犬が亡くなったのをきっかけに、この歌が大好きになった。愛犬はメスで、お世辞にも頭の良い犬ではなかったと思う。エサをもらえば、泥棒にだってなつくような食いしん坊だった。学生時代の僕をいつも尻尾を振って迎えてくれた。自分よりはるかに小さな犬に対しても臆病だった。散歩で歩くスピードが、歳と共にゆっくりになり、最後の方はかなり息切れしながらそれでも尻尾は振りながら歩いていた。隣り近所の方達にも可愛がってもらい、亡くなった時は胸が引き裂かれるほど悲しかった。お腹の病気だったらしい。最後を看取った母は、かなり気丈な人なのに、二度と犬は飼わないと決めてしまった。それほどに辛かったのだろう。母方の実家の山の下に、先祖の近くにと埋めたのを覚えている。しばらくはどうやっても悲しさを引きずっていたのだけど、そんな時にこの曲を聴く機会があり、涙と共に、僕は彼女との思い出を愛せるようになった。

 

   ♪ Daydream Believer  /     THE TIMERS

 

もう今は 彼女はどこにもいない 朝早く目覚ましが鳴っても

そういつも 彼女と暮らして来たよ ケンカしたり 仲直りしたり

ずっと夢を見て 安心してた 僕はDaydream Believer そんで彼女はクイーン

でもそれは 遠い遠い思い出 日が暮れてテーブルに座っても

Ah今は 彼女 写真の中で 優しい目で 僕に微笑む

ずっと夢を見て 幸せだったな 僕はDaydream Believer そんで 

彼女はクイーン 

ずっと夢を見て 安心してた 僕はDaydream Believer そんで彼女はクイーン

Ah Ah Ah Ah  Ah Ah Ah Ah

ずっと夢を見て 今も見てる 僕はDaydream Believer そんで彼女はクイーン

ずっと夢を見て 安心してた 僕はDaydream Believer そんで彼女はクイーン

ずっと夢見させて くれてありがとう 僕はDaydream Believer そんで

彼女はクイーン

 

 人はみんな夢を見て生きている。それもかなり都合の良い形で。良いものは終わらず、覚めない悪夢は無いと思っている。人生すら夢だと思っているほどだ。楽しい時が終わらなければ良いと願って生きている。それでも夢は終わるのだ。だって夢なのだから。それが辛いのは、安心していた時に終わりがいきなり来るからだ。終わることがあるんだよって、誰も教えてくれないから。だから終わりを受け入れられず、悲しみに負けてしまう。あの時の僕もそうだった。こんなお別れなんて嘘だろう?明日も散歩に行くんだろう?と現実逃避をしていた。そんな時、この曲に教えられた。ああ、あの日々は夢だったんだな、と。僕はその夢が幸せすぎて安心しきってたんだな、と。彼女は僕に夢を見させてくれていたクイーンだったんだな。それが理解できた時、僕は悲しみを乗り越えられた。幸せな思い出に変える事が出来たし、今だってあの頃の夢を見てる。本当に歌詞の通りだ。後に知った事だが、清志郎さんは三歳の時に亡くなった自身のお母さんに向けて、音楽だけ借りて歌詞を自分なりに書いたそうだ。同じ様な気持ちを持っておられたのだろう。お別れは悲しいけれど、それを嘆いてばかりいたら、会わない方が良かったの?って言われてしまう。そんな事は決してないよね。こんな自分に素敵な楽しい夢の様な時間をくれた。感謝しかない。

 たった一匹の僕のクイーン。今でもあなた以上に可愛い犬はこの世にいないと思っているよ。今度生まれ変わったら、また友達になって欲しい。今度は僕が犬で、君が飼い主かもしれないけれど、天気の良い日には一緒に散歩に行こうね。可愛い首輪をつけて欲しい。広場で全力で走って欲しい。笑って頭をなでて欲しい。そしてまたいっぱいいっぱい思い出を作ろう。今日も君と歩いた散歩道には、幸せな夢を見て、安心している人達がたくさん歩いているよ。少しでも長く、その日々が続くと良いね。たとえその夢が覚めても、みんなの大切な夢は、ずっと続いていくから、安心して。    

 僕は幸せなDaydream Believerです。ずっと夢見させてくれてありがとう。僕は君と出会えて、本当に本当に幸せだったよ。ではまた。