釈迦に説法

幸せについて考えてみる。

ワンピースという哲学書。

 70歳を過ぎた叔父さんに、”何か面白いものないか?”と尋ねられたから、”ワンピースが面白いから読んでみれば?”と勧めたところ、”なんだ、漫画か。”と笑われた。時間が余るのだろう。楽しい事を探しているのはよく解るし、良い事だ。でも、大いに間違っている。自分の考えの範疇で物事を見ているから、楽しい事が見付からない。だから僕に尋ねたのだろうに、漫画だからと受け入れられない。だから大人はつまらないと言われる。面白い事など見付かるはずがない。ワンピースは凄い。あれは哲学書の様なものだ。だからあんなに世界中で読まれている。僕は自分で読んだからそれを知っているし、その分叔父さんより楽しい事をひとつ多く知っている。もし作者がどこかの大学の先生で、小説なら面白いと思うのだろうか?少し考えを改めた方が良い。今までの仕事でも、新しい意見や若者の考え方を受け入れてあげられていたのだろうか?自分が正しいとばかり思い込んでいたのではないだろうか?不安は尽きない。

 かくいう僕も、ワンピースを読み始めたのはここ5,6年前の事だ。それ以前に友達から”3億部も売れてるんだよ?読んで感想聞かせてよ”って言われていたのだけれど、天邪鬼な僕は、そんな理由では読めなかった。50巻以上あるって言ってたし。そんなの読めないわと断り続けていた。ところがひょんなところから、職場の若い子達がワンピース考察なるものをやっていた。普段モノもろくに言わない子が、熱心にしゃべっていた。これは凄いと興味が沸いた。好きなものをしゃべる人間が、僕は好きなのだ。オタクと言われる人達も、大好きなのだ。自分には好きなものがありますって言っている人は、キラキラしてる。嫌いな事ばかり愚痴っている奴は、退屈なだけ。そしてその子の言われるがままに、最初の5巻を渡された。読んでみて、ふーんって感じ。”どうでした?”と聞かれ、”楽しそうだね。バギーのセリフが良いね。”と言うと、”見込みがあります。”と次の10巻を渡された。(笑)その次の休みに、僕は全巻大人買いする事になるなんて思いもしなかった。これは売れるわ、夢中になるわと理解した。それからの僕は、若い子達に、”これは哲学書に近いものだ。みんなどう感じてる?”と、聞いて回る大人になった。作者と同い年だというだけで、みんな聞く耳を持ってくれた(笑)。考察を僕に聞きに来る様になった。ワンピースは哲学書である。楽しい哲学書。難しいと最初に思い込むから楽しさに気付けないという事がある。下手な道徳書を使うなら、ワンピースを読ませれば良い。決して悪い大人にはならないだろう。漫画だから伝えやすいし、良い事ずくめだ。だから敢えて言おう。大人達よ、ワンピースを読め、と。世代間のコミュニケーションに凄く役に立つ。人は好きな人の言葉なら聞こうとしてくれる。あなたの事は嫌いでも、ルフィの言葉なら聞くのである。だから僕はよく使う。”ワンピースのあのシーンで、ナミは何と言った?それはどうしてだと思う?”と。しばらく考えた後、多分こうじゃないかな?と諭すと、彼らの目はキラキラし始める。自分の納得する答えを見付けたからだ。すごいな、この哲学書ソクラテスより役に立つ(笑)今あなたが嫌いだと思っている事があれば、挑戦してみる事をお勧めする。新しい発見は、違う環境の中からしか生まれない。自分の世界を広げたければ、知っている事より、今まで避けていたモノに近づく事が大事。外国に行ってみるのもそうだし、料理を始めてみるのもそう。是非チャレンジしてもらいたい。

 それにしても尾田栄一郎氏は凄いと思う。同い年で、同じ時代を生きて来た自分でも、尊敬してしまう。何よりも好きな事をやり続けている事、人としての悟りの目覚めが早い事。漫画を描く才能も、言葉の使い方も、それを構成する才能も。デザイナーや映画監督もできそうだね、あの人は。ワンピースのファンって事は、尾田栄一郎氏のファンって事だからね。時代を代表する発信者である。そうだ、これから自分の事を”尾田世代”って言おう。彼の力に引っ張られて僕が良い人だと勘違いしてもらえるかも。健康には気を付けて、続けて頂きたいものだ。ちなみに好きな事を夢中でしている時、人は病気にならないし、努力とも感じないもの。夢中でゲームしている子供は、ゲームがうまくなるけれど、努力している実感はないはずだ。夢中に敵うものはなし。僕らも夢中で生きて行きたいものですね。ではまた。